わずかな移り香も(4)建礼門院右京大夫集を書く
4.はなだの薄様の枕が
夜遅く目が覚めて、あれやこれやと考えていると、ふと涙がこぼれてしまったのです。朝になって枕元を見やると、
「つとめて見れば、縹の薄様の枕の、ことのほかにかへりたれば」
選字は、「徒とめ弖
見れ者花多のう須ようのま久羅のこと
乃ほ可爾か遍りた連盤」
意味は、朝になって見ると、縹の薄様の枕が、とても色褪せていなので。
「縹」とは、「縹色」の省略です。露草で染めた藍色よりも淡い青色のことです。別名、花色ともいわれますが、これは「はなだ」の音の響きからきています。「花色」と言われると、赤やピンク色などを思い浮かべますが、いにしへの人は音に敏感だったのでしょうね。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社