蘇軾・秋の清々しさを詠う(10)和分與可洋川園池うち二首

10.何紹基について

蘇軾作 何紹基書 祥香臨

最初に少し書きましたが、何紹基について改めて触れます。

 何紹基は、学力の高さと公正さが評価され、しばしば科挙の地方試験の責任者として朝廷から派遣されていました。絶頂期には四川学政に任ぜられましたが、その後務めに関する意見書が不穏当とされたことから、1855年9月に官界を去り、野に下りました。

 その後は、碑を求める旅を重ねます。生涯で訪れなかったのは、雲南と甘粛だけであったとのことです。何紹基は、顔真卿の争坐位帖との共通性が高く、漢碑の張遷碑を愛し、臨書を生涯続けたことで知られています。

 顔真卿は王羲之と対照的であり、張遷碑は八分の美に対する不均衡の古樸を志向しています。いずれも、金石家として、常識にとらわれず自らの書を明確にしています。儒家的に対する道家的な概念の表れとする見方もあるでしょう。

 技巧的でありながら、自由な独自な書の表出は、現代的な側面があり魅力があります。漢字かな交じり書にも通ずるものがあるように思います。
 参考文献:「墨」212号 超絶技巧の書 魚住和晃 芸術新聞社