資盛のあの時のおもかげ(3)建礼門院右京大夫集を書いて

3.枯野の狩衣

建礼門院右京大夫集 祥香書

雪が深く降りつもり、このような日に訪れる人があると趣が深いでしょうに、などと思いにふけっているときに、

釈文:「枯野の織物の狩衣、蘇芳の衣、紫の織物の指貫きて、ただひきあけていりきたりし人のおもかげ、わが有様には似ず、いとなまめ

かしく見えしなど、つねは忘れがたくおぼえて、年月おほくつもりぬれど、心にはちかきもかへすがへすむつかし。」

引戸をすっと開けて現れたお方は、ビシッと決めたお姿も凛々しく美しい資盛でした。ここで、注目の色合わせです。枯野(表が黄、裏が薄青)の狩衣に、指貫とよぶ袴は、紫色です。

そこで今回は、指貫に合わせて紫の紙です。上着が黄に裏地が薄い青(今では薄い緑)のいでたちは、相当に印象的です。今でも心に残り昨日のことのように、姿がちらつくというのはわかる気がします。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社