月明かりにうたげの追憶(9)建礼門院右京大夫集を書く
9.心の留めないで
自分のように歌も詠めない者はどうしよう、などと語っていた権亮がついに詠んだ歌です。
釈文「心とむな 思ひいでそと いはむだに
こよひをいかが やすぐ忘れむ」
選字は「こヽ路とんな於も飛いてそ登
い者む堂にこよひを以可ヽや春九
わ須連ん」
大意は、心に留めるな 思い出すなといっても、どうして今宵の楽しかったことを忘れられましょうか。
二行目の下部に「や」を配置し、一行目の「そ」と呼応させました。うねりを保持しながら、動きを左右にして余白に変化を出しています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社