月明かりにうたげの追憶(2)建礼門院右京大夫集を書く

2.花のさかりに

建礼門院右京大夫集 祥香書

六行目から、釈文:「花のさかりに月明かりし夜を、『ただにやあかさむ』とて、権亮朗詠し、笛吹き、経正琵琶ひき、御簾のうちにもことかきあはせなど、おもしろくあそびしほどに」

選字は、「花の佐可利耳月明可り志夜
     をたゝ爾阿可さんとて権亮朗詠
     し笛吹支経正琵琶ひき御簾の

     う遅に毛琴可支あはせなと於も
     志流(ろ)くあ所飛し本登爾」

大意は、花のさかりに月明かりの夜、「何もしないでこのまま明かしてよいものか」と権亮が朗詠し、笛を吹き、経正が琵琶を弾き、御簾のうちから女官たちもことを合奏し、管弦を楽しんでいるところへ。

月明かり夜の下、花のさかりに朗詠し、次々と加わる管弦の調べ、絵巻物のように舞台が展開していきます。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社