交わしたい歌の贈答(1)紅葉の頃に北の方より

1.紅葉につけて

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文: 三位中将維盛の上のもと
    より、紅葉につけて、青も
    みぢの薄様に

君ゆゑは をしき軒端の紅葉をも
をしからでこそ かくをりつれ

選字は、「三位中将維盛の上農も登
     よ利紅葉爾つ希て青毛
     み遅のう須やうに

君ゆ惠者越し乃支はのもみち
をけ尾事可羅てこ所可九た乎
り徒連」

大意は、維盛の北の方から紅葉につけて青もみじの紙(表青、裏朽葉色)に歌が書き付けてあった。歌の意味は、折ってしまうのが残忍なくらいの紅葉も、あなたのためなら惜しくはありません。さあ差し上げましょう。

以前にも、維盛の北の方とは、心が通い合うような贈答が、5月には菖蒲をおくられています。この時代には、色彩も一面的ではなく、表裏で色合わせを楽しんでおられのでしょう。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社