董其昌の書(2)酒徳頌を味わう
2.酒徳頌とは
「酒徳頌」とは、酒の功徳をほめたたえるの意味です。
漢詩の作者は、劉玲、西晋時代沛国(安徽省宿県)の人。字は、伯倫、思いのままに行動し、宇宙は狭く万物は斉しいと考えていた。
言葉少なく、人と妄りに交際しなかったが、阮籍・嵆康とは、うち解けて交際した。晋・武帝の秦始年間の初め、朝廷で対策し、無為の化を説いたため罷免された。竹林の七賢人の一人。*①
竹林の七賢人とは、中国の魏・晋の交代期に世塵を避けて竹林に会し清談を事としたと言われる文人、阮籍・嵆康・山濤・向秀・劉玲・阮かん・王戎の称。
また、清談とは、魏晋時代に盛行した談論です。後漢の党錮の禍に高節の士が多く横死して以来、知識人らが儒教の礼教に反し、老荘の空理を談じ、琴を弾き酒に耽り、放逸を事とした風俗を指します。*②
つまり、漢詩の作者は老荘の思想に親しみ、その意に感じるところあって書をしたためた董其昌は、老荘思想に関連がある禅に造詣が深かったのです。
出典*①漢詩と名蹟 鷲野正明 二玄社
*②広辞苑