董其昌の書(1)酒徳頌を味わう

1.董其昌の魅力

酒徳頌巻 董其昌 祥香臨 二玄社

とらわれのない書として、あげたいのが董其昌です。
董其昌(1555〜1636)は、字を玄宰、思白と号し、現在の上海松江の人。萬歴十七年(1589)の進士で、官は南京礼部尚書に至りました。詩書画ともによくし、特に書画の実作、鑑識家として知られ後世に大きな影響を及ぼしました。

書は、幼少のころ顔真卿の多宝塔碑から入り、虞世南、王羲之に遡り、金稜で王羲之の真跡を見るに及んで、真蹟に寄らなければ真髄を得られないことを悟ったという。

彼は、王羲之を学び、形似を追わず、精神を把握することに重きを置いたと言われます。自らの書を卒意にありとし、平淡天真の妙境を目指しました。彼の書は、晋唐人の書に理解を示した米芾の影響を受けているといわれます。

さらに、董其昌は禅に造詣が深く、その妙悟によって、禅の境地に至ろうとしたようです。その書は、洗練され疎らで、清の康熙帝に大変愛されました。

出典:董其昌集 藤原有仁 二玄社