春のおもしろみ(4)声に出したい和漢朗詠集

4.桜をかざして

粘葉本和漢朗詠集 二玄社 祥香臨

四句目、「もゝしきのおほみや人に(は)いとまあれや
     桜かざしてけふもくらしつ
」赤人

選字は、「毛ゝしきの於本みやひとは
     いとまあれやさくらかさして
     けふもくらしつ」

「もゝしきの」は「宮」の枕詞
宮中の方々は、お暇があるのですね。桜の枝を髪にさして今日も暮らしています、の意味です。

ただ、万葉集には巻十、野遊に
「ももしきの大宮人は暇あれやをかざしてここに集へる」
とあります。『朗詠集』以後に梅から桜へ変わり、『新古今和歌集』にも「桜」で収められています。

時代の流れが、桜を春の花へと変化させたことがうかがわれる例として興味深いです。
 参考文献:和漢朗詠集 川口久雄 講談社