生まれたての春は(5)和漢朗詠集より

5.春は地形にしたがって

粘葉本和漢朗詠集 二玄社 祥香臨

東岸西岸之柳 遅速不同 南枝北枝
 之梅開落已異
」 春生逐地形

読み下し文は、「東岸西岸の柳 遅速同じからず
        南枝北枝の梅 開落已に異なり」
        春の生ることは地形に逐(したが)ふ」

「東岸西岸の柳」白楽天の詩、早春即事からきています。
「南枝北枝の梅」『白氏六帖』にもとづいています。

『謡曲』の「東岸居士」をはじめ、多くに引用されています。*①

意味は、春は地形にしたがって来訪が異なります。東岸の柳が芽吹くのは早く、西岸は遅いというように。また、同じ梅でも南枝の花が散る頃、北枝の花が開くように異なっています。

山々の花が一度に咲かずに、次々と色彩を加えていく頃には春爛漫となるのでしょう。

出典:*①和漢朗詠集 川口久雄 講談社