春立つ日に詠む(1)和漢朗詠集より
1.和漢朗詠集とは
今回は、粘葉本和漢朗詠集から春、立春をご紹介します。
和漢朗詠集とは、藤原公任(966〜1041)が代表的な詩歌を編纂したものです。公任は、関白太政大臣頼忠の長男で、権大納言・正二位まで昇進した、漢詩・和歌・管弦の三つの才に恵まれた当時の代表的な文人でした。
この時代には、漢詩や和歌の鑑賞と共に、貴族の宴席での遊びとして朗詠することが流行しました。そこで、中国や日本の漢詩、日本独自の和歌の中から秀句・秀歌を選び『和漢朗詠集』上下二巻が成立しました。
多くの書写本が存在し、粘葉本和漢朗詠集、雲紙本和漢朗詠集などが知られています。作者は藤原行成と伝えられていますが、自筆とは断定し難いものの、いわゆる行成様と呼ばれる書風です。
漢詩は楷書・行書・草書とで書かれ、字形はやや扁平ながら端正で平安王朝の美意識が偲ばれれます。和歌は流麗で平易な書き振りで、とても読みやすい素直な運筆です。
参考文献:粘葉本和漢朗詠集 古谷稔 二玄社