ひそやかに漂う香り(5)梅を詠う

5.小声で吟ずるにふさわしい

 「幸有微吟可相狎
  不須樽板共金尊


読み下し文は、「幸いに微吟の相狎るべき有り
        須いず 樽板と金尊と」

意味は、幸いに小声で吟ずるには、ふさわしい詩がある、樽板も豪華な酒樽もいらない。

最後は、隠棲を通した作者らしく、小さく吟ずるには自分の詩がちょうど良い。それには拍子をとる楽器やぜいたくな酒樽もいらないと詠うのです。

「作者は作った詩をすぐ捨てるので、理由を尋ねると『名を求めるつもりもないのに、後世に名を残すこともない』と答えたという。*①」清らかで私欲がなく、暮らしていた作者自身の姿を投影したものであったのです。

 出典:*① 漢詩をよむ 佐藤正光 NHK出版