ひそやかに漂う香り(4)梅を詠う
4.紋白蝶もおどろく
「霜禽欲下先偸眼
粉蝶如知合断魂」
読み下し文は、「霜禽(そうきん)下らんと欲して先ず眼を偸(ぬす)み
粉蝶 如し知らば合(まさ)に魂を断つべし」
意味は、「霜枯れどきの鳥は、降りようとして先ずぬすみ見る、紋白蝶がもし気づけば、きっと魂の断ち切れるほど、いたましいこととなるだろう。」
「断魂」はここでは驚くの意、ともあります。*①
これまでの控えめな描写から一転して、大胆な表現が展開します。小さな庭に向かって歩を進めていた脚は、急に空へと上り視点を移して、その花を目にしようとします。鳥も蝶も驚くほどの美しさで、梅が咲いているのだろう、と読者に想像させます。
出典:漢詩をよむ 佐藤正光 NHK出版