秋の虫の音も愁いを帯びて(2)建礼門院右京大夫集

2.去りゆく秋を想うきりぎりす

建礼門院右京大夫集  祥香書

きりぎりすも去りゆく秋を慕っているのでしょうそして「飽き」てしまったの、と詠んだ歌です。

  「床なるる枕のしたを ふりすてて
   秋をばしたふ きりぎりすかな」

用字は、「東こ那るゝ萬久羅のし多越
     布梨寸弖ゝ阿き乎は志多ふ
     支理ゝゝ春可奈」

今回は、「関戸本古今集」の筆意で書いてみました。どうしてかというと、
「関戸本古今集」には
  「秋はぎもいろづきぬれば きりぎりす 
   わが寝ぬごとや よるはかなしき」(読人しらず)

とあるからです。こおろぎの声と寝所はつながって着想される題材であったことがわかります。
  参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社