夏野の草や、水鶏よ(3)建礼門院右京大夫集
3.私に約束し、他の女にも・・
題は、「我に契り人に契る恋」で、私に約束し他の人にも約束する恋、の意味です。
意味深なタイトルで、何か始まりそうです。あくまで題詠歌ですが、一首読みます。
「たのめおきし今宵はいかに待たれまし
所たがへの ふみみざりせば」*①
選字は、「多の免おきし今宵はい可
耳待多連ま事所堂可遍の
婦さんみさ利勢八」
歌意は、「あの人が、きっと行くよと言ったので、どれほど私はお待ち申し上げたことでしょう。今宵、他の女に宛てた手紙を見るまでは。」
場面が一転して暗くなるような展開に、ハッとします。このような「所違えの文」の例は源氏物語にも見られるので、次回見ていきましょう。
*出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社