夏野の草や、水鶏よ(2)建礼門院右京大夫集
2.連夜の水鶏
毎晩鳴く水鶏の意味ですが、急に「水鶏」とは驚きます。これは暗喩で、男性を待つ女性の視点から詠まれています。
「あれはててさすにともなき 真木の戸を
なにと夜離れず たたく水鶏ぞ」
選字は、「あれ者てゝ沙春こ登毛那支
満き乃と越な耳と夜か連寸
多ゝ久水鶏そ」
意味は、訪れる人もいなくなった、荒れ果てた家に戸を夜通し叩く水鶏よ、です。
ここで、「たたく」は男性が通うときにとを叩くことから、おとづれがなくなり寂しさが募る家の風景が浮かびます。
参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社