恋にも様々あり題詠歌(3)建礼門院右京大夫

3.谷の辺りで鳴く鹿は・・・

建礼門院右京大夫集  祥香書

「谷の辺の鹿」とは、谷の辺りで鳴く鹿のことです。
鹿が鳴くのは、雄鹿が雌鹿を恋い慕っているといわれています。

例えば、「奥山にもみぢふみわけなく鹿の声聞くときぞ秋はかなしき」読み人知らず(古今集)があります。

初めて鹿の鳴く声を聞いたときは、はっきりとしたよく通る声に、鹿とは思いませんでした。
その声は切ないというよりは、元気の良い小鹿が親鹿を呼んでいるようにも聞こえました。

ここでも、「谷が深く、杉の梢を吹く風に雄の鹿は妻を求めてかなしく鳴いている」となっています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社