過ぎ去ったかつての恋(1)建礼門院右京大夫

1.往時の恋

建礼門院右京大夫集  祥香書

さらに、建礼門院右京大夫の題詠は多才になってきます。
 「往時恋」では、過ぎ去った昔の恋と題し詠みます。


  「あはれしりて たれか尋ねむ つれもなき
   人を恋ひわび 石となるとも」*①

選字は、「あは連し利て多れ可堂つ年
     無川麗毛なき人乎こ悲わ飛
     いしと難る登も」

歌意は、「気の毒に思ってだれが訪れてくれましょうか。薄情な人を慕って、たとえこの身が石になってしまったとしても。」

現代では、失恋で石になってしまうとは、随分と極端な話のように感じますが、実はこれには伝説がありました。次回、お楽しみにしてください。

 *出典:①建礼門院右京大夫集 新潮社