歌から道元禅師をよみとく(2)
2.夏ほととぎす
当時、武士たちの台頭によって、豊かだった自然は荒れ、人々の心にあった自然への畏敬の念は薄れていきました。
それまでは、伝来の仏教と古代からの神々との間に競合は起きず、神仏習合の思想が定着していました。ところが、武士たちが山に砦を築いたりと、自然をないがしろにする風潮になっていきました。
道元が六歳の時「新古今和歌集」が成立し、天台座主の慈円は今様で自然との共生を呼びかけています。
花
春のやよひの あけぼのに 四方の山べを 見わたせば 花ざかりかも
白雲の かからぬ峰こそ なかりけれ
ほととぎす
花たちばなも にほふたり 軒のあやめも かをるなり ゆふぐれざまの
五月雨に 山時鳥 なのりして*①
日本の国土は山河草木に覆われた緑豊かな地ですが、山は砦や山城にも適していたのでしょう。今でも、山城の跡には守りを堅めるための壕や石垣が見受けられます。
*①出典:道元の和歌 松本章男