歌から道元禅師をよみとく(1)

1春は花

道元禅師和歌集

「春は花 夏ほととぎす 秋は月
   冬雪さえてすずしかりけり」

歌意:春は花が美しく、夏はホトトギスが耳を楽しませ、秋は月が心を打ち、冬は雪が冴え冴えと凍って、すべてすがすがしいことであるよ。

この歌は、川端康成が1968年、ノーベル文学賞を授与された直後、川端さんがストックホルムで「美しい日本の私」と題する受賞記念講演の冒頭に朗吟したことが知られています。

道元の和歌は、示寂後に発見された草稿・備忘録の類などに詠み記されてあったらしい。遺弟たちがそれらの詠草を根気よく収集した。道元が示寂して約百七十年が経過し、永平寺十四世建ぜいによって、最初の道元伝記が著され、付載される形で初めて世に知られる所となった。*①

誰にも親しまれる平易な歌の中に込めまれた、道元の意をみていきましょう。

          *出典① :道元の和歌 松本章男 中公新書