何にでも書いてしまう良寛さん(5)
5. 良寛さんは良寛さん
引き続き良寛の作品の特徴ですが、
六 点画の表現力がたいへん強く、古典に匹敵するものがある
七 あかぬけしていて、こだわりがない
八 技巧にすぐれ、個性的な風格である
良寛さんの書は、良寛そのものである、という点が際立っています。
書道作品を仕上げるために、多くの作家は何枚も紙を使います。ところが、当時紙などが限られた資源であったこともあり、良寛は一度で書き上げたそうです。
前述の魚住氏も、「書を楽しもう」の中で
「書道をきわめようとする人は、ひたすらに技巧を追求します。歴史に学び、流儀に打ち込み、もてる力量を駆使して一作を作り上げることに励みます。つまり、『有』の増量を
ひたすらにはかっているのです。日本を代表するような展覧会に出品している書家は、一
作のために紙を1000枚も使うことがめずらしくありません。
ところが、そうした書道の達人がひとたび良寛の書にふれると、どんな技巧を持ってしてもかなうものではないと感服するのです。」
晩年の村上三島氏は、良寛の書を見て衝撃を受け、「何ともいえぬ柔らかい線で、墨を含ませても気持ちの乱れがない」と「わがこころの良寛」で述べています。
まさに「書は人なり」、と感じ入る良寛の書作品の数々です。
参考文献:書を楽しもう 魚住和晃 岩波書店
墨 2006年181号 田宮文平