貞心尼に代りてよめる良寛歌(4)
4.初めての歌集「蓮の露」より
『蓮の露』や良寛の弟由之の日記『山つと』『八重菊日記』によると、良寛は文政十三年の秋ころから気分がすぐれなかった。冬になり、貞心尼が
「そのままになほ堪へしのべいままさらにしばしの夢をいとふなよ君」
と書き送ったところ、良寛の返歌が上記の歌です。
釈文:「あづさゆみ春になりなば草の庵をとく
出てきませあひたきものを」
歌意:春になったならば、あなたのお住まいを早く出てきてください。ああ、お会いしたいものだなあ。
語釈:あづさゆみ= 梓の木で作った弓であるが、弓の弦を張るところから同音の「春」に掛かる枕詞
草の庵=ここでは貞心尼の住んでいた閻魔堂を指す。
その年の暮れに病状悪化したので貞心尼が駆けつけると、良寛はさも嬉しそうに、
「いついつと待にし人は来たりけり今はあひ見て何か思はむ」と詠んだのです。
参考文献:和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編著