ダイナミックな王羲之、喪乱帖(1)
1.誰かお怒りですか?喪乱帖
「喪乱帖」は王義之の真跡ではなく、唐の時代に作られた双鉤填墨によるものです。
双鉤填墨とは、輪郭を敷き写して墨で充填するように細密に、原本を再現していく
技法で、自筆を思わせるほどの出来栄えです。実際に拝見しても、あたかも今書き
終わったかのような臨場感があります。
そして、このダイナミックな草書は「喪乱帖」の尺牘です。尺牘とは、手紙ですが、
先祖の墓が荒らされたことを憤慨し、報告する内容で、王羲之が五十四歳の書です。
草書なので、若干読みにくいところもあると思いますので、釈文を記します。
「義之頓首 争乱之帖 先墓再離茶毒 追惟酷甚 號慕摧絶」
始まりは、謹み深く丁寧に書かれていますが、線の細太がはっきりとしていて筆の
上下運動も大きくなっています。
これから、気持ちの高まりに応じて、どのように書き振りが変わっていくのかみて
いきましょう。