こういう時は聖教序を臨書しよう(5)

5.続・ぞく・不調和のバランス

集字聖教序  王羲之   二玄社       祥香臨

オ)上下の部首の変化
(1) 下に広がっている  「廣」「兼」「若」など
  冠、(草かんむり)や、たれなどが広がる
(2) 上が大きい     「學」「業」「雲」など
  上の部分が下に比べて大きくなっている。

カ)斜め上下左右の変化
斜めの方向のゆがみがあることです。したがって行書が、動的に感じられます。
(1) 右斜め上方向に張り出している:「陰」「投」「波」など
(2) 左斜め下方向に張り出している:「馳」「乎」など
(3)  左斜め上方向に張り出している:「老」「聖」など
(4) 右斜め下方向に広がっている :「蔵」「城」など

こうした歪みは変形とも言えます。其変形を巧みに用いることで、一字の中に生じる
余白の分量に変化をつけています。次の文字が何がくるかや、強調したい場所によって
形の変化は多様です。

この聖教序は集字でありながら、一字からだけでなく全体からも感じられる一連の動きが、書き手の手腕を鮮やかに見せています。そしてその変化が自然で、作為がないところに行書の典範と言われる訳があり、私たちが常に学ぶべき書をいえるでしょう。

             参考文献:「集字聖教序」 天石東村  二玄社