自由奔放な古筆、香紙切(4)
4. 息の長い連綿 Continuously written characters
三行目:「こゑにこころのとまりぬるかな」
「こ」は「己」が字母なので、つづけたときに筆意が感じられます。
「ゑ」は「恵」の旧字を字母としています。「声」を歴史的仮名遣いでは、
「こゑ」と読むのですが、古筆を読むときに注意が必要な点です。
歴史的仮名遣とは、仮名遣いの基準を現代の発音によらず、普通基準を
平安初期の文献におくものです。それに対して、発音通りに書こうとする
仮名遣いの形式は、表音式仮名遣です。
「に」は「爾」を用いて、「こ」「ゞ」「ろ」と続けて一気に「の」「と」
まで進みます。ここで気を付けたいのは、「ろ」は「路」を字母としている
のですが、少し省略が過ぎたのか読みにくい点です。こういうところは、こ
のまま、写しますと誤字と思われることもあるので、気を付けましょう。
「ま」は「万」を選び、「り」は「利」を字母としています。「ぬ」は「奴」
を字母とし、「る」「可」「奈」と渇筆がさえ、鋭い直筆が効いています。