自由奔放な古筆、香紙切(2)

2.筆者はどなたでしょうか  Who is the writer of the Kousikire?
筆者は、小大君(こおおきみ 又は、こだいのきみ)と伝えられています。
小大君は三十六歌仙の一人で、平安時代の女流歌人です。

円融天皇の中宮に仕え、三条院が東宮の時の女蔵人(宮中に奉仕した下級
女房)で女房名は左近でした。しかしながら、確証はありません。

      東京国立博物館蔵                    逸翁美術館蔵       祥香臨

逸翁美術館蔵の古筆切から見ていきます。
一行目に作者名を少し下げた所から書き始めています。
「中つかさ」を「中」「つ」「可」「さ」

「ゆくみちも」
「ゆ」は「遊」を用いて、しっかりと墨が入り印象的な始まりです。特に、辶
で横に広がりを持たせ、現代にも通ずる書きぶりです。

「く」は「久」が字母ですので、「み」は「見」を使い左の余白へ働きかけて
います。「ち」は「遅」を選び、やはり辶で字幅をとっています。

ここで気を付けたいのですが、『も」が「毛」を使いながら若干、読みにくい
字形となっている点です。うっかりすると、「を」のようにも見えるので、
ひょっとすると書き癖のようなものかもしれません。

このように香紙切はとても軽妙で、魅力にあふれているのですが、字形を良く
学んだ後に習うか、師匠や先輩に確認する必要のある箇所が見受けられます。