関戸本の臨書を読む(1)
1,関戸本を横に読む Read Horizontally
名古屋の素封家に伝来した関戸本古今集は、縦横無尽で巧みな動きや、墨色の
変化といった様々の要素が、現代の人々をも魅了し続けている作品です。
今回は、二玄社刊 日本名筆選19 関戸本古今集を臨書したものを題材として
説明します。
この辺りは、断巻として個人蔵の箇所であり、右の部分とはもともとつながって
いたわけではないのです。大らかに書かれながら、墨の色の変化も際立ち、
特徴的なところです。
また、前回まで見てきた寸松庵色紙の歌が書かれている箇所ですので、少し
親しみがあるかもしれません。
中程の『年ふれば・・・」の歌は、渇筆から始まっています。通常は、墨を
付けてから書くので、潤筆となりますが、ここでは、右から書いてきて、墨量が
少なくなって枯れたわけです。
そして「花を」で墨つぎをして、墨色をはっきりと目立たせています。
墨の変化が寄せては返す波のように右から左へと流れ、あたかも文字の動きに
呼応するかのようです。
まずは、この景色をお楽しみください。