久米禅師と石川郎女の歌四首(2)金沢本万葉集

2.みこもかる
選字:「みこも可るしなのヽまゆみわ可ひけは うまひとさびていねとい者む可も」

鑑賞:久米禅師の人物像は定かでない。禅師を僧侶の意味であろうが、名と見る説もある。

語釈:「み薦かる」信濃にかかる枕詞。「みくさかる」や「みすずかる」と訓ずる説もある。「引かば」弓を引くことと、女性への求婚をかけている。「貴人(うまひと)さびて」身分の高い人らしく。

書の鑑賞:「みこも可るしなのヽ」連綿はあまり目立たず、ゆったりと始まる。「い者む可も」終句は墨を継ぎ、弾力的な書線が

効果的である。

参考文献:万葉秀歌(一) 久松潜一著 講談社学術文庫