古を訪ねて万葉集の世界(2)金沢本万葉集より

2.金沢本万葉集とは
現在は宮内庁三の丸尚蔵館に所蔵されるが、前田家から明治天皇に献上されたものである。『万葉集』巻第二の大半にあたる五十八枚と巻第四の九十七首文を二十枚の料紙に書き写したもの。

その書の特徴は速筆で歯切れが良く、リズミカルで流動感に溢れている。全体の流れと躍動感にあふれ一字ごとの形にはこだわりがない。

筆者は、平安の三蹟として名高い藤原行成から五代目にあたる定信といわれる。定信は「一筆一切経」で知られ、二十三年間で一切経を仕上げるために、速筆にならざるを得なかったと思われる。

参考文献:金沢本万葉集 藤原定信筆 二玄社