時雨の紅葉・風の前なる(10)和泉式部日記を書いて

11.常盤の山も
釈文:「との多ま八せ多れ盤 うつろはぬ常盤の山ももみぢせば いざかし行きてとうとうも見ん」

選字は「との多ま八せ多れ盤 有徒ろ者ぬ常盤のや万もヽみ遅八 以さ可し行支て登うヽヽ毛見无」

鑑賞:「かし」は強調の終助詞。「とうとう」は底本では「とふとふ」、疾う疾うの意と見た。「問ふ」とする説もある。

歌意は「常に緑の絶えない常盤の木が紅葉したのであれば、見に行きましょう。」暗に宮の誘いを断ったもの。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社
和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫