智永千字文の筆つかいにみる(12)楷書と草書
12.道を問う
釈文:「坐朝問道」
書き下し文は「朝に坐(い)て、道を問ひ」
鑑賞:天子は坐って政務をとり、国の中に道を問い求めた。昔、漢の文帝は全ての群臣に老子の五千言を説かせた。河上公が『老子』に詳しいと聞き、帝は彼を召したが、かなわず自ら出向いて教えを求めた。
尊大な態度で、坐ったまま立ちもしない河上公に、業を煮やした帝が非難する。これを聞いた公は地面から十丈の高さに体を浮かせてゆっくりと身をおこして言う。
「私は上は天に届かず、下は地面を踏まず、中は人を煩わしていない。のんびりと思いにまま、心安らかである。どうして富貴を羨もうか。」
これを聞き、帝は非礼を詫びて拝したので、公は老子の『道徳経』の注釈を授けた。それで「坐朝問道」というのである。
参考文献:千字文 小川環樹他注釈 岩波文庫
