月見ぬ夜更けての文(7)和泉式部日記を書いて

7.予想外の返歌に
釈文:「とあるを、『おし違へる心地して、なほくち惜しくはあらずかし、いかで近くて、かかるはかなしごとも言はできかん、とおぼし立つ。」

選字は「と阿る越おし多可遍多流心地してな本久ち 惜し久盤阿ら春可志い可亭近久天可ヽ類者か 奈志こと毛言はせて聞可無と於本し立徒」

鑑賞:「おし違へたる心地して」宮の心を表す。「見るや君」に対して、わざと反対に「月はしも見ず」といってきたような気がして、宮としてはかえって興が深く思った。

「なほくち惜しくはあらずかし」やはりそのままにしておけない人だ、と宮は感じた。そばにおいておきたいという気持ちが生じた。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社