手枕の袖・陰暦十月に(3)和泉式部日記から

3.揺り起こして
釈文:「あはれにおぼされて、女ねたるやうにて思ひ乱れてふしたるを、おしおどろかさせ給ひて、『時雨にも露にもあてでねたる夜を あやしくぬるる手枕の袖』」

選字は「あは連二於本されて女年多流やう爾て思比 み多連て婦し堂流お志於とろ可沙せ多ま 飛て 『し倶連耳毛露爾も阿てヽ年たる夜を あや志久ぬ流ヽ手枕の袖」

鑑賞:「手枕」腕を枕とすること。「手枕の袖」は雅な平安王朝を思わせる歌語で、これから八首の歌に繰り返しあらわれる。

歌意は「時雨にも露にもあてないようにして寝ているのに、今夜はどうしてか手枕をした袖が濡れてしまった。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社