仏法の山路に入りかけながら(1)和泉式部日記を書いて

1.たとえ苦しくても
釈文:「『苦しくとも行け』とて、『問ふ人とか。あさましの御もの言ひや。 たづね行くあふ坂山のかひもなく おぼめくばかり忘るべしやは」

選字は「九流し具と裳行遣とて問ふ人東可 阿さま志の御も農言ひや 多徒年行久あ布佐可山農か出裳那里 於本免久盤可里忘類へしや八」

鑑賞:「苦しくとも」は宮が童に命じたもの。
歌意は「逢坂山の峡(かひ)を越えてたずねて行ったかいもなく、『問ふ人やたれ』などと言われるほどわたしのことを忘れてよいものか。」

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫