秋の寝覚め、夕べの訪問(5)和泉式部日記より

5.思い切ることは
釈文:「とあるを、御覧じても、なほえ思ひはなつまじうおぼす。つごもり方に、『いとおぼつかなくなりにけるを、などか時々は。人だずにおぼさぬなめり』とあれば」

選字は「とあ流を御覧してもな本盈おも比者奈徒ま しう於本春 つこ裳り方耳意登おほつ可奈久難里二遣 流を奈と可時々は 人数二おほさぬ那免里と阿連八盤」

鑑賞:「なほえ思ひはなつまじう」(宮は)やはり思い切ることができないと「つごもり方」は7月下旬。「晦方」といっても三十日近くとは限らない。

「時々」は「などか」を受けて、宮が女に他の男と同じように扱ってくれませんか、の意味。宮は女がよその男に歌を詠んでいると考えたから。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社