久しぶりの宮の来訪は(4)和泉式部日記より
4.着なれておいでの
釈文:「御直衣などのいたう萎えたるしも、をかしう見ゆ。ものものたまはで、ただ御扇に文を置きて、『御つかひの取らで参りにければ』とて」
選字は「御直衣なと農い堂う那え多流し毛越可志 有見遊ものヽヽたま盤傳多ヽ御扇爾文を置き 亭御つ可飛農取らてまゐり爾希連八とて」
鑑賞:「御直衣」当時の男性貴人の平服。「いたう萎えたる」よく着なれた、洗練された。「ものものたまはで」宮様はこだわりがあり口が重い。扇に文をのせて、口上も侍者に言わせる。
大意は「お召しのお直衣はよく着なれたご様子で、趣がある。宮は寡黙であられ扇に文を置いて『樋洗童が持っていかなかったので」として」
参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社