花たちばなの香をかげば(2)和漢朗詠集を臨書して
2.雨にぬれた橘の
釈文:「枝繋金鈴春雨後 花薫紫麝凱風程」
書き下し文は「枝には金鈴を繋(か)けたり春の雨の後 花は紫麝を薫ず凱風の程」
鑑賞:「金鈴」橘の実が丸くオレンジ色であることから。「紫麝」麝香、色はむらさき。
『枕草子』「木の花は」の段にこの句をもとにした「四月のつごもり、五月のついたちなど比(ころ)ほひ・・・」とある。
現代語にすると「春雨の後、雨の滴に濡れてツヤツヤを光る橘の実は熟して枝に黄金の鈴をかけたようだ。その花は、初夏の風に香り、まるで麝香のようである。」
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫