夏を涼みつつ朗詠したい詩歌を(8)和漢朗詠集より

8.涼しいかしらと

釈文:「涼しやと草むらごとに立ちよれば 暑さぞまさる常夏の花」中務

選字は「すヽしやとくさむらことに多ちよれはあつさ所まさるとこ那つの者那」

鑑賞:「常夏の花」ナデシコの古名。『源氏物語』(紅葉賀)に「常夏のはなやかに咲き出でたるを」とある。

「すヽしや」と「あつきぞまさる」は漢詩の対照語の修辞法をまねた、古今集様式の理知的な歌といえる。一説には紀貫之の作とある。

現代語にすると「涼しいかしらと、草むらに立ち寄るとどれもナデシコの花が咲いている。ナデシコは常夏とも床夏とも書くのだから、かえって暑くなてきたようだ。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫