つごもりの日、しのび音のほととぎす(6)和泉式部日記より

6.せっかくお会いしたのに

釈文:「いさやまだかかるみちをば知らぬかな あひてもあはであかすものとは」

選字は「以佐やま多可ヽ流み遅越者し羅ぬ可奈 阿日弖裳あはて明可春も能登八」

鑑賞:「いさや」は「いさ」に間投助詞「や」がついたもの。どんなものか、どうか知らないが。「あひてもあはであかすものとは」は「ア音」の頭韻を重ねている。

歌意は「どんなものか知らないが、こういう手立てがあるとは知らなかったですよ。せっかくお会いしているのに、逢瀬を重ねず夜を明かすことになるとは。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社