ほととぎすの初音を聞きながら(4)建礼門院右京大夫集より
4.五月二日は母の
釈文:「五月二日は、昔の母の忌日なり。心ちなやましかりしかど、手など洗ひて、念仏申し、経よむ法師呼びて、経よませて聴
聞するにも、また来む年のいとなみは、えせぬこともやと思ふにも、さすがあはれにて、そでもまたぬれぬ。」
選字は「五月二日は昔農母の忌日な利心地奈や
ましか里志可登て那と洗ひて念佛
申志経よむ法師よひて経よま勢弖
聴聞する耳毛万多こ無年のいとな三
者江せぬこと裳やと思布爾も佐春可
あは連二亭袖毛またぬ連ぬ」
大意は「五月二日は亡き母の命日だった。気分がすぐれなかったけれど、身を清めて念仏をお唱えし、僧侶に読経を頼んだ。来年お法事はできないかもしれないと思うと、悲しくて袖がぬれた。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社