恋すれば私の身は(7)関戸本古今集を臨書して
7.落ちたぎつ
「おちたぎつ川瀬に浮かぶうたかたも
おもはざらめや 恋しきことを」
選字は、「於遅堂記徒か者せ爾有可ふう多
閑たも於も八さらめやこひ志支ことを」
この和歌は古今集にはありませんが、綺語抄の二〇九に載っています。
「綺語抄 」は平安時代の歌学書。歌語辞書。藤原仲実著。三巻。1107~16年の間に成立と言われる。本文は歌語を天象・時節など一四門に分けて簡単な注を施し,万葉集・古今和歌集などの例歌をあげる。*①
本歌は墨の用い方に特徴があり、2字目の「遅」は横画で墨を効かせ縦画は細い姿が印象的
です。次の「堂」は左に向け、連綿を短くして「記」につなげています。一般的にはここで
小さい字を選ぶところですが、筆者は逆に「徒」で広く取り余裕を見せます。
適度な流れと動きが相まって軽妙な出だしとなっています。墨をたっぷりとつけた「か」の
終筆をあえて遠くへ打ち、空間を生かしていることも妙です。
出典:① 大辞林第三版
参考文献:関戸本古今集 二玄社