湯治に来た友へ歌を贈る(8)建礼門院右京大夫集から

8.鳴子を引いて

建礼門院右京大夫集 祥香書

鶉ふす 門田の鳴子 ひきなれて
 かへりうきにや 秋のやまざと


選字は、「う徒ら布寸かと多の鳴子日支那連
     て可遍り有き耳や秋の山沙と」

鑑賞:「鳴子」といえば、現代はよさこい祭を思い出す人も多いでしょう。
   元々は、田畑が鳥獣に荒らされるのを防ぐための仕掛けです。横板に
   数本の竹片をぶら下げたものを縄に掛け連ね縄を引くと音がなるよう
   にしたものです。

   「ひき」は「鳴子」の縁語で、湯に入るの意味の「引き」との掛詞。

歌意は、あなたは山里でうずらが隠れている門の近くにある田の鳴子を引いた
    りするのに慣れて、都に帰りたくなったのでしょう。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社