七夕の空を眺めて(3)建礼門院右京大夫集を書いて
3.沈んだ心で星合の空を
物思いに沈み、秋にめいてきた頃に風の音が、作者の身にいっそうわびしさを感じ
させます。
「風の音はさらぬだに身にしむに、たとへむかたなくながめられて、星合の空見
るも、物のみあはれなり。
つくづくと ながめすぐして 星あひの
空をかはらず ながめつるかな」
選字は、「徒久ヽヽ登な可免す具して星あ
飛乃楚ら遠か者羅寸奈閑め川る哉」
歌意は、七夕の夜、牽牛と織姫の二星が逢うという今宵もいつもと変わらずに、
寂しい思いで眺めたことです。
小宰相の情にあふれた行いを我が身と引き比べ、うら寂しい作者の心情が表れて
います。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社