七夕の空を眺めて(2)建礼門院右京大夫集を書いて
2.身の振り方も定まらず
通盛と小宰相の契りの深さは、他に例がないほどとありますが、確かに『平家物語
にみられます。
身籠もっていた小宰相の早まった行いを止めようと、亡き人の菩提を弔うよう、
乳母が諭しても小宰相の意思は固く、西方浄土と思われる方を向き『南無西方極楽
世界教主、弥陀如来、本願誤たず浄土へ導き給ひつつ、あかで別れ妹背のなからひ、
必ず一つ蓮に迎へ給へ』*① と唱え、海に沈まれました。
「かへすがえすためしなかりける契りの深さもいはむかたなし。」
選字は、「可遍須〃多
免し那里希流遅き利の深さもい者む
可多なし」
「大方の身のやうも、つくかたなきにそへて、心の中もいつとなく物のみかなしく
てながめし頃、秋にもややなりぬ。」
選字は、「大方農身のやう毛徒久方な支に處へ弖
心の中もい徒とな具物のみ可那志久て
なかめしころ秋耳毛やヽ奈利努。」
*出典:平家物語 巻第九
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社