安徳天皇のお誕生など(2)建礼門院右京大夫を書きつつ
2.遠く聞く宮のおめでた
心ならずも、宮中を離れた作者は、中宮徳子のお産や皇太子のお祝いを遠くから聞くことしかできません。以前であれば慶びの中にいられたものを、と残念に思い詠んでいます。
「雲のよそに きくぞかなしき 昔ならば
たちまじらまし 春のみやこを」
選字は、「久裳のよ所耳き供曽かなし支む可志
那ら盤た遅ま事羅万四春のみやこを」
宮中でのおめでたいことなどを外で聞くのは悲しいことです。宮仕への昔なら、一緒に立ちまじっていたでしょうに、春のような宮中で。
華やかな宮中で、賑やかに忙しく振る舞っていた昔の自分は、遠い過去となってしまいました。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社