月明かりにうたげの追憶(10)建礼門院右京大夫集を書く
10.後にもなつかしく思い出され
釈文:「うれしくも こよひの友の 数にいりて
しのばれしのぶ つまとなるべき」
と申ししを、『われしも、わきてしのばるべきことと心やりたる』など、この人々の笑はれしかば、『いつかはさは申したる』と陳ぜしもをかしかりき」
用字は、「うれ志久裳こよひ農登毛の
か数爾い利て志能盤連しの
ふ徒まとな流遍支」
と申ししをわれ志も王き
て志の者る遍支ことヽ心や利多る
な登この人々農笑はれし可八
いつ可者さ盤まう志たると陳
せしも越可志かり支
大意は、「うれしくも今宵のお仲間に加えていただいたことで、後ほどなつかしい思い出の糸口になるでしょう。
と言われて、『自分だけが特になつかしく思い出されるだろうと、いい気になっているよ』と人々が笑ったので、経正が『いつそんなことを申しましたか』と弁解したのもおもしろかった。」
からかわれて、言い訳をする様子が微笑ましい光景ですが、経正は清盛の甥御でした。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社