鉛筆でかな古典を書いてみる(4)

4.関戸本と高野切第一種の鉛筆書きを並べてみよう 
Sekido and Kouyakire by pencil

左側の三行書きが、関戸本で右側が高野切第一種です。
和歌でありながら、雰囲気が随分と異なります。

時代に応じて、変体かなとして使う文字が変化していることが
分かります。前回は、全体の動きについて述べましたが、
今回は、選字の変遷について書いてみたいと思います。

かな書において、文字を選ぶことを選字と言い、現代の作家も
色々と工夫を重ねます。平安時代も後期になりますと、
時代が揺れ動き、落ち着いた優雅な貴族の暮らしからは遠ざ
かっていきます。

そうした時代を背景として、選字にも変化が見られます。
例えば、『をりつれば』の『ば』を『盤』と書いたすぐ後に
『そ』を『處』と使うことは、変化を求める時代と呼応して
いるのではないでしょうか。

『あ利とや』の選字も簡素でありながら、書き手の気持ちの
高まりが伝わるように畳み掛けていきます。