御所の近くが火事に(1)建礼門院右京大夫集
1.五節のころ
内裏の近くで火事があったときのことです。
「五節」とは、古代から朝廷で行われていた行事で、新嘗会(しんじょうえ)・大嘗会(だいじょうえ)に五人の舞姫による舞楽です。
「いづれのとしやらむ、五節のほど、内裏ちかき日の事ありて、すでにあぶなかりしかば、南殿に腰輿まうけて」
「南殿」は紫宸殿の別名です。*①
「腰輿」とは、手輿と同じで、長柄を腰の辺りまで持ちあげて運ぶ輿のことです。非常時などに用いるので、急を要していたことが伺えます。
選字は、「いつ禮のとしやらむ五節の
ほと内裏ち可記火の事阿りて
す弖爾あ婦な可り志か者南殿
耳腰輿まうけて」
火事のような危急の事態に、建礼門院右京大夫は何を感じたのでしょうか。
これから、みていきましょう。
*出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社