菊合のころ詠む(1)建礼門院右京大夫集

1.小松のおとど

建礼門院右京大夫集  祥香書

今回は、小松のおとどが、菊合をなさったときのことです。小松のおとど、とは、平重盛のことで、東山小松谷に邸があったために、小松殿などと呼ばれました。*①

「菊合」(きくあわせ)とは、物合わせの一種で、歌などをつけて人数を左右に分け、菊の花を持ち寄って優劣を競う遊戯です。「寛平御時菊合」は現存する最古の史料です。

 「小松のおとどの菊合をし給皮脂に、人にかはりて」

選字は、「小松のお登ゝ乃菊合を
     し多まひ志爾人二
     可は利弖」

「小松」や「菊合」と行った名詞は漢字を用い、わかりやすく文字を選んでいます。他方、二行目は一行目に配慮してシンプルな選字としています。「し」や「爾」で、行の幅を抑えています。

 *出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社