道元の自然とは、和歌から(1)
1.峰のいろ
釈文:峰のいろ谷のひびきも皆ながら
わが釈迦牟尼の声と姿と
選字: 峰のいろ
多に農飛日
幾も三那な
から
わ可釈迦牟尼の
聲と寸可太
登
この歌は「法華経」と題されている一首です。
仏教の中で、阿含、方等、般若、法華と説かれ、仏法の中において最高の教えである。
「法華」とは文字通りに「法の華」です。「法の華」とは、人が作り事をすることでな
く、必然に、必ず法自体としての動きがある、この法自体としての動き、それ自身を「法華」という言葉を遣ったのです。*①
道元禅師が「法華経」と題されてこの歌を作られました。
「峰のいろ」季節の移り変わりに応じ、その一日の中でも変化があります。山の峰もその時々によって変わってきます。
「谷のひびき」もそれぞれの時節に従い、聞こえてくる音も様々です。
そのありのままの姿が、仏のありようを示しているということです。
*出典:①法華讃 井上義衍